日本で語られる様々な都市伝説。
その中でも、
不気味な怪談として有名なのが、
群馬の白いソアラ、と呼ばれる話である。
内容の不気味さに加え、
話の背景を調べてみると、
面白い考察が出来ることが分かった。
前半部分では白いソアラの話を紹介し、
後半部分では、この話の考察をしてみようと思う。
都市伝説_群馬の白いソアラ
これは、私が大学生の頃の話です。
1980年代当時。
若者の間で人気のあった車、ソアラ。
トヨタの高級車ということもあり、
新車は勿論、中古車でも値段が高く、
なかなか、手が出せずにいました。
そんな時、友人のNが、
「実は俺、今度、ソアラを買うことになったんだ。」
と言ってきました。
私は、羨ましいと思う反面、
貧乏学生だったNにソアラを買うお金があるのか疑問に思い、
犯罪にでも手を染めたのかと少しだけ心配になりました。
するとNは、
「この前、たまたま国道沿いの中古車ショップで、
白いソアラが10万円で売られてたんだよね。」
と言うのです。
当時のソアラと言えば、
状態次第とは言え、中古でもかなりの値段。
私は、
車体がボロボロか、事故車に違いない、
と思い、心配そうにNに聞いてみると、
「いや、それが新品同様の奇麗さで、
走行距離も全然行ってなかったんだよね。」
とのこと。
新品同様のソアラが10万円?
そんなバカな。
いくらなんでもそれは不自然だと思った私は、
翌日、Nに付き添い、その中古車ショップに行ってみることにしました。
翌日・・・・
Nと一緒に、中古車ショップへと出向いた私。
お店自体は普通で、特に怪しい感じもなく、
車の値段も至って普通。
「これこれ、この白いソアラ。」
Nが嬉しそうに指を指す先に、
そのソアラがありました。
確かに、新品同様に奇麗な白いソアラ。
メーターを見ても走行距離は少なく、
事故車という感じもしない。
勿論、事故車を修理した可能性もありますが、
店員が言うには、
「汚れたシートの交換だけで、修復はしていない。」
とのこと。
この時の店員の微妙な言い方に疑問を感じたものの、
事故を起こした訳ではないという言葉に安心したN。
しかし…
新品同様のソアラが10万円・・・
私はどうしてもその不自然さが気になりました。
そんな私を見てNが、
「お前、俺が格安でソアラを手に入れるのが、羨ましいだけだろ?
買ったらお前も乗せてやるから、嫉妬すんなよ。」
と言ってきました。
その言葉に少しだけイラっとしたものの、
羨ましい気持ちがなかったわけではないので、
考えすぎかなと思い、Nが白いソアラを購入することを止めはしませんでした。
今思えば、私があの時、
もっと強く反対しておけば良かったのかもしれません。
Nが白いソアラを購入して数日後のこと。
大学でNと顔を合わした際、私に
「今日、学校帰りに彼女とドライブへ出かける」
と言っていました。
Nに彼女なんていたっけ?と思った私ですが、
どうやら、車でナンパをして出来た彼女らしい。
そう語るNはとても嬉しそうで、
格安のソアラに違和感を持っていたことなどすっかり忘れ、
私はただただNを羨ましく思っていました。
翌日・・・・
私が大学へ向かうと、
同じ科目を取っているはずの、
Nの姿がありませんでした。
どうせ、授業をサボって、
彼女とソアラを乗り回しているのだろう。
そう思った私は、
特に気にも留めませんでした。
しかし、そこから数日経っても、
Nは大学に姿を現しませんでした。
さすがに心配になった私は、
実家暮らしの彼の家に電話を掛けることに。
すると、Nの母親から、
Nが車で事故を起こして入院している、
という話を聞きました。
命に別状はないとのことでしたが、
そう語るNの母親は、激しく動揺している様子で、
心配になった私は、Nが入院している病院へと向かいました。
病室へと入った私は、
Nの変わり果てた姿を見て愕然としました。
首にコルセットを巻いている以外は、
怪我をしている様子はなかったのですが、
元気だった頃と比べて、酷くやつれており、
会話もままならないほど精神に異常をきたしていました。
ここからは、
たどたどしく語ったNの話を、私なりにかみ砕いてお話します。
Nが、
学校帰りに彼女とドライブへ行くと私に語っていた日のこと。
彼女を迎えに行ったNは、
彼女を乗せると、そのまま当てもなくドライブをしていたそうです。
車は徐々にスピードを上げ、
風を感じようとした彼女が、
車のサンルーフから顔を出したその時・・・
「ガン」
上で鈍い音が。
そのまま、助手席にドサっと座り込む彼女。
乱暴な座り方に、
どうしたのかと彼女の方を見ると・・・
彼女の首から上はなくなっており、
首元から大量の血が吹き出していたそうです。
その様子に発狂したNは、
ハンドル操作を誤まり、ガードレールに激突。
そのまま気を失い、
気付いたら病院のベッドの上だったそうです。
そう語るNの様子は、
酷く何かに怯えているようで、
その後はただひたすらに、
「首が痛い、首が痛い。」
と言っていました。
その数日後・・・・Nは首を吊って亡くなりました。
後で分かったことですが、
格安の白いソアラは、曰くつきの車として、
この地方では有名だったそうです。
新車で白いソアラを購入した若い男性が事故を起こし、
助手席に乗っていた彼女が亡くなったのだとか。
そして、
精神を病んだ持ち主がその白いソアラを売りに出した所、
購入する人が相次いで不慮の死や、怪奇現象に見舞われ、
相場価格とはかけ離れた値段で売りに出されるようになったそうです。
Nが事故を起こした後、
その白いソアラがどうなったのかは分かりません。
もしかしたら、
今もどこかの中古車ショップで、
ひっそりと新しい持ち主を待ち続けているのかもしれません。
考察
今回紹介した、
「群馬の白いソアラ」と呼ばれるこの話は、
1980年代に若者の間で都市伝説として広く知られるようになり、
過去には、テレビ番組などでも放送されたこともあります。
ですが、出所は不明で、
実際にそのような事故があったのかも定かではありません。
一応、この話が広まるきっかけとなった、
二つの説について紹介したいと思います。
1、呪われたポルシェの改変
海外では、1950年代から1960年代にかけ、
「呪われたポルシェ」と呼ばれる話が広く流布されました。
どこかでまたこの話も取り上げてみたいと思いますが、
概要だけを話すと、
当時、ポルシェに乗っていたジェームス・ディーンが、
事故を起こし、亡くなり、その後、そのポルシェに関わった人間の多くが、
怪我や事故死をした
その話が、日本版に改変されて広まったのではないか、
というのが、一つめの説。
2、白いソアラ暴走族
今回紹介した話では、亡くなったのは若いカップルですが、
それとは別に、ソアラに乗り悪ふざけをしていた暴走族が、
身を乗り出し、標識にぶつかり、首が吹っ飛んだ、という話もあります。
一説によると、
こちらの方が先に広まったと言われ、
その後、時代背景の変化や語り手の都合により、
「若いカップル」にすり替わっていったのではないか、
とも言われています。
それと、これは余談ですが、
世の中にある都市伝説じみた話というのは、
その時代の背景を色濃く反映したものが多く、
例えば、今回紹介した、
「白いソアラ」が広まった1980年代というのは、
暴走族の最盛期であり、社会問題化していました。
彼らの多くが、
白いソアラに乗っていたかは不明ですが、
多くの若者が、車の箱乗りなどで事故を起こし、
中には命を落とす者もいたと言われています。
そういった諸々の話が脚色され、
代表的な話として白いソアラが、
広く流布されたのではないか、と考えることが出来ます。